チェソンユンとイジャンジュンが恋人関係にあることは、会社内では周知の事実であった。正確に付き合い始めた時期を答えられる人はいなかったが、とにかく、二人の仲は疑いようがなかった。
長い練習期間でも腐らず諦めず、共に貴重な青春時代を夢のために捧げた二人だった。
怒ると誰よりも恐いけれど、相談に乗ってくれるときの頼もしさで右に出るものはいないチェソンユン。
どんなにきつい練習でも最後まで声出しを欠かさない、常に周りをよく見ているムードメーカーなイチャンジュン。
デビュー準備中もデビューしてからも常にグループの中心にいて、重要なポジションを担う二人だから、周りもとやかく言うことはなかった。

イチャンジュンは言った。初めて会ったときに鐘が鳴ったと。
チェソンユンは言った。二人でバスに揺られて登下校を共にしたあの一年間が、練習生時代における1番鮮明な記憶だと。

チェソンユンの前でしか涙を見せないイチャンジュン。どんなことも1番に話してきたイチャンジュン。
誰よりもイチャンジュンのことを理解しているチェソンユン。深い愛情を惜しむことなく注いできたチェソンユン。

それでも、周りが気付かないうちに二人の心の距離は開いていた。
愛情を受け取りきれずとりこぼしてしまうことが増え、カメラの前での不意打ちに上手く対応できないチャンジュンに、ソンユンのフラストレーションがたまっていった。
怒ったソンユンに無視される度にチャンジュンは泣いた。
「お前のせいだろう?」
そんな言葉でプライドを守ってしまう。そんな自分自身がソンユンは大嫌いだった。傷つける言葉をぶつけては後悔する。その繰り返しだった。
いっそのこと終わりにするべきか?そう何度も思った。



きっかけは些細なことだった。
久しぶりにもらえた連休を使って、二人はお互いの実家へ顔を出すと共に、間で一泊する計画を立てていた。
離れてしまった気持ちを、少しは取り戻せるかも知れないとソンユンは考えていた。
しかし。
いつの間にかジュチャンも一緒に行くことになっていたのだ。2人の関係は知っていても、2人のことが大好きで、何よりチャンジュンに片想いしているジュチャンはここぞとばかりに便乗してきたのだった。
チャンジュンに悪気はなく、ただ自然に会話の中で触れたのだが、それが問題だった。ソンユンだったら絶対にジュチャンには言わなかった。
「せっかく久しぶりに二人きりになれる機会だったのに。なんなんだよ。」
「ごめんなさい。まさかついてくるとは思わなくて。」
チャンジュンは自分に向けられるそういった感情には鈍感だった。それがまた、ソンユンを悩ませていたのだった。

決定的な事件はその一泊で起こった。
さすがに3人は狭いので急遽一室増やしたは良いが、まず部屋割りでもめた。
ソンユンはもちろんチャンジュンと使うものだと思っていたのに、ジュチャンがくじ引きにしようと言い出した。結果チャンジュンが1人部屋になった。
真夜中に起き出したソンユンはジュチャンを起こさないように慎重に部屋を出て、隣のチャンジュンを訪ねた。目的はもちろん一つだった。
「何しようとしてるんですか!」
「何って、分かってるだろ?」
「ダメですよ!このホテル壁薄いじゃないですか!」
「だから?」
「ジュチャンに聞かれたらどうするんですか?」
「関係ないでしょ。」
「とにかく!今夜はダメです!」
「今夜はって、次がいつ来るかも分からないのに?だからジュチャンなんて連れてこなければ良かったんだよ!チャンジュンにとって俺はその程度って事ね。分かったよ。もういいよ。行けよ。ジュチャンの部屋に行けよ。俺がここで1人で寝るから。」
「そのことは謝ったじゃないですか!何ですかその程度って!ソンユニヒョンこそ俺のこと分かってない!」
「分かってないのはお前の方だろ!いいから行けよ!」

翌朝ジュチャンが目を覚ますと、隣のベッドにはチャンジュンが寝ていた。泣き疲れて寝たようで、頬にはくっきりと涙の後があった。
俺を起こしてくれたら胸を貸したのに。そうジュチャンは思った。

その日、チャンジュンの実家に居るときを除いて、2人の間に会話はなかった。



ソンユンは怒りを隠せていなかった。心の奥では泣いているのに、それを誤魔化すために怒っているのだった。今日も朝からずっとチャンジュンを無視していた。今回の群舞にはペアの振り付けもあるのに、練習中ですら態度を改めようとしなかった。
他のメンバーも感じ取っていたが、どうすることも出来なくて空気は悪くなるばかりだった。次男としていつもはリーダーをサポートして動線の確認に精を出すはずのソンユンがこの状態では、練習が上手く行くわけがなかった。それをソンユンも分かっていて、メンバーに迷惑をかけている自分にも憤りがたまっていくのだ。
「今日は先に上がります。」
夕食のメニューの相談をしているメンバー達にそう伝えて、ソンユンはダンス練習を放棄してボーカルルームに引き上げた。それを辛そうに見送るチャンジュンに、ジュチャンはいたたまれなくなるのだった。
「ごめんなさい。」
チャンジュンがソンユンの代わりにみんなに謝った。メンバーは皆分かっているから、チャンジュンを責めたりはしない。二人で解決するしかないと、ただ励ますのだった。
「はやく仲直りしろよ。」
そんなリーダーの声に、ジュチャンは良くないと分かっていても、"しばらく仲直りしなくても良いのに"なんて思っていた。

一旦冷静になるために、とソンユンはボーカルルームでVをつけた。ファンと交流して、"甘い彼氏"ごっこをしていたら少しは落ち着くと思ったのだ。いつものように『夜ご飯何食べようか?』とか最近のドラマの話をしながら、流す曲は失恋ソングばかりだった。テンションが低めなのをコメントで指摘されたが、練習で疲れているからとごまかした。

練習室では通知に気付いたチャンジュンがVを見ていた。ファンと同じ目線で、優しい視線に胸をときめかせ、同時に、それが自分に向けられているわけではないことに胸を痛めた。
そんなに辛そうな顔をしてまで、なんで見ているのだろう?ジュチャンには理解できなかった。顔を上げてこっちを見て欲しくて、ひたすらにちゃちゃをいれた。
「ご飯食べに行きましょうよ!」
「俺たちも終わりにして宿舎帰りませんか?」
「少し遠回りしてお散歩します?」
ジュチャンはチャンジュンに気分転換をさせたかった。少しで良いからソンユンのことを考えないで欲しかった。

Vで気分が少し上向いたソンユンは、中途半端なのがやはり気にかかって、ダンス練習を再開しようと練習室へ戻ることにした。
扉を開けると、壁により掛かって座って、横にしたスマホを覗き込むチャンジュンと、その肩に頭を乗せてスキンシップをしているジュチャンがぱっとソンユンの視界に入ってきた。
トドメを刺された気分だった。

あー・・・勘違いじゃなかったんだな。チャンジュンの気持ちはもう、俺にはないのかもしれない。もう戻れないみたいだ。
悲しいのに、やっぱり怒りが先に来てしまう自分に、ソンユンはほとほと嫌気が差していた。

「練習しないなら出てって。今から使うから。」
冷たく言い放って、ソンユンは曲を流して踊り出した。
「俺も一緒に練習します。」
チャンジュンが立ち上がって配置についた。ソンユンはわざと大きく距離をとった。ジュチャンも負けてたまるか、と入ってきた。
"二人でやれば?"
そう言ってやりたいけれど、口にしたら認めることになりそうで、肯定されるのが恐くて、ソンユンはただ黙って練習を続けた。
チャンジュンはその後も健気に声をかけ続けたが、ソンユンは徹底的に無視をした。その日中に仲直りすることはかなわなかった。
同じベットで、仕切りを挟んでお互いに背を向けて寝た。"おやすみ"のキスも、あの優しい笑顔もまるで遠い過去のようだった。悲しくて寂しくて、チャンジュンはあの白クマをぎゅっと抱いて眠った。


どこで間違ってしまったんだろうか?終わりのない喧嘩をこれからも何度も続けなきゃならないのか?あの頃に戻れるだろうか?チャンジュンさえ大丈夫なら?意味もなく疑いすぎたか?信じられずにいた?
・・・いや、俺じゃもうチャンジュンを笑顔にしてあげられないんだ。俺にしか涙を見せられないなら、せめて、自分のせいでチャンジュンが泣くのは避けないと。これ以上嫌われてしまう前に、未練は上手く隠して、終わりにしよう。チャンジュンを好きな気持ちと共に、嫌いな自分とも決別しよう。グループのためにもチャンジュンのためにもこのままは良くないだろう。

ソンユンは一晩中考えた末、身を引くことを決意した。
自分と居るより、ジュチャンと居るときの方が楽しそうだし。きっと幸せになれるだろう、と自分に言い聞かせた。

「ごめん。もうチャンジュンのこと恋愛対象として好きじゃなくなった。別れよう。」
数日置いてから、ソンユンはそう簡単にメッセージを送った。納得できない様子のチャンジュンには気付かないふりをした。

付き合っていたことが暗黙の了解だったように、別れたことも、報告がなくとも、周りはただ事実として受け入れていた。一つの青春が終わったんだな、くらいの認識だった。そもそもここまで続いていたことが凄いとさえ思っていた。グループの活動に支障がなければそれで良かった。
本当は今でも想い合っているのだが、それを知るものは本人達を含めても誰もいなかった。
それもそのはず、演技力があるソンユンは自分の未練を見事に隠していた。仕事でも練習でも、付き合っていたときより自然にチャンジュンに接していた。2人の絡みは多少減ってはいたが、10人もメンバーがいれば"ケミ"はいくらでもあるからそんなに気になることでもなかった。
だからメンバーも"完全に終わった"のだと信じ切っていたのだった。
そんなソンユンの演技力に騙されているのはチャンジュンも同じだった。変わらずソンユンのことが好きなのに、片想いだと思っているから何もできなかった。行き場のないこの想いをただ持て余していた。
何でもっとしっかり受け止めてこなかったんだろう?あんなにも沢山の愛をくれていたのに。何でもっと伝えてこなかったんだろう?同じだけの気持ちを抱いていたのに。
今さら後悔しても遅いのに。まるで付き合っていた日々がなかったみたいに接されると、チャンジュンはひたすらに胸が苦しかった。


その一方で、ジュチャンとソンユンの関係は良好そのものだった。しっかりと"メボズ"であり"ソウルメイト"を貫いていた。チャンジュンへの気持ちにソンユンが気付いていることに気付いていたジュチャンは当初、活動に支障が出てしまったらどうしようと恐れていたのだが、杞憂だった。
「お似合いだね」
「二人の仕事あって良かったね。」
なんて応援までしてくる、その余裕さが憎らしかった。どこまでも完璧なチェソンユンという兄の前では子供でしかないのだと、ジュチャンは悔しかった。いっそのこと女々しく泣いて、別れたことを後悔するそぶりでもみせてくれたらよかったのに。これじゃあ仮にチャンジュンと付き合えたとしても、全然勝った気がしない。こんなに潔く身を引いて、ノーダメージな態度を貫かれたらまるで情けをかけられたみたいじゃないか。ジュチャンだけが、ソンユンには敵わないことを実感していた。
「で?告白したの?」
「いつ付き合うの?」
そのうちこんなことまで言い出しそうで、ジュチャンはこの兄、チェソンユンが別の意味で恐ろしかった。

いくら自然であると言っても、チャンジュンはふとした瞬間にソンユンのことを見ていたし、口が笑っていても目が笑っていないことが増えた。視線に気付いてソンユンが見返せば、明らかに目をそらすのだった。ソンユンに対しては元々表情管理が甘かったが、前より悪化していることにジュチャンは気付いていた。こんな状態で告白したところで、上手くいくとはとうてい思えなかった。カメラの前では性質が同じ者同士で盛り上がることが出来たけど、そんなバラエティー向きの絡みだけじゃ満足できなかった。ジュチャンが本当に求めているのは、嬉しいことも悲しいことも何でも話せて何でも共有できて、支え合える関係だった。だから、馬の合う"弟"として楽しく付き合うだけじゃなく、上手く笑えない理由を吐き出して欲しかった。弱みを見せて欲しかった。
「ヒョン、最近元気ないですよね?悩み事ですか?」
「え?いや、ちょっと寝不足なだけだよ。」
話をいくら振っても、こうやっていつもかわされてしまうのだった。好きな人の"陰"の部分を受け入れる準備はできているのに、いっこうに涙も見せてくれないことがもどかしかった。お悩み相談には自信があるのに、どうして頼ってくれないのだろうか?
そしてなにより。
ジュチャンが1番好きな表情は、ソンユンと別れてから一度も見ることは叶わなかった。ジュチャンがチャンジュンに落ちたきっかけでもあったその表情は、例えるなら、普段の原色のはじける笑顔ではなく、淡いパステルカラーのはにかむ笑顔だった。
宿舎に帰ってきて、ベッドに寝っ転がってシャワーの順番待ちをしながらスマホのメンバーの写真フォルダを漁った。スクロールしてはパッと止める動作をランダムに繰り返してはお気に入りのその表情を別のフォルダにまとめていく。そうして完成した特別なフォルダを一枚一枚見返していけば、どうしたって分かってしまう。
チャンジュンがその微笑みを向けるのは、いつだってソンユンにだけだった。2人と居ることが多かったジュチャンだから、偶然目にすることが出来たとも言える。
「これも・・・これも。はあー・・・なんだよ。最初からだったんじゃん。」
ジュチャンが好きになったチャンジュンはソンユンあってこそだったのだ。ソンユンに対してしか出さないチャンジュンの一面が確かにあって、その部分を垣間見ては"かわいいなあ"と思っていたのだ。
「こんな風に知りたくなかったな。」
可愛いに決まっていた。・・・好きな人に向ける表情だから。チャンジュンに向けるソンユンの表情もまた、陽だまりのようだった。ただし、ジュチャンはこのことをソンユンにもチャンジュンにも言うつもりはなかった。時が流れてチャンジュンが完全にソンユンへの気持ちを消し去れる可能性に賭けたかった。


それから二回ほど活動をしただろうか。
ジュチャンの願いとは裏腹に、チャンジュンはただただ胸の中で気持ちを育てたまま、暗い部分は絶対に誰にも見せなかった。仕事の悩みを相談する相手を失って不安定な心を、必死に隠して強がっていた。悩んでいる人を察知する能力に長けているソンユンが他のメンバーの相談に乗っては感謝されているのを見かけては、内心とても羨ましく思っていた。

「チャンジュナ、大丈夫か?俺には何でも話せよ?」
「何がですか?問題ないですよ?」

ソンユンはもちろん、チャンジュンにだって分け隔て無くそう聞いていた。それでも、チャンジュンは前のように簡単に話すことが出来なかった。話せば絶対に親身になって聞いてくれるし、心が軽くなるに決まっているのだが、メンバーの1人として扱われるのが嫌だった。それほどまでにチャンジュンはソンユンのことが好きだった。ソンユンの特別で居たかった。
それが無理なら、この気持ちをどうにかして忘れてしまいたかった。同じグループで活動していて、同じ宿舎で生活をしていて、それどころか同じ部屋で寝起きしているのに、どうやったら忘れられるって言うんだろう?いつだってかっこいいこの兄、チェソンユンに恋をしない方法があるなら教えて欲しい。いっそのこと、もっとひどい言葉で振ってくれれば良かったのに、とさえ思った。



「ヒョン、一緒にご飯行きませんか。」
予定より早くスケジュールが終わった日、社屋のトイレでバッタリ会ったソンユンを、チャンジュンは勇気を出して誘った。二度の失恋に耐えられるかは分からないが、中途半端な関係に限界が来ていたから、すべて話して整理しようと思ったのだった。
「お、いいね。久しぶりにあそこにする?」
練習生の頃によく2人で行った定食屋に入り、ツイッター用に何枚か写真を撮った後、お酒も注文した。2人とも明日は終日休みだった。

「ソンユニヒョン、俺・・・とっても辛いんです。」
「ん?何があった?話してみな?」
久々の相談だった。チャンジュンの瞳にはすでに溢れんばかりの涙がたまっていた。どのくらい、泣くのを我慢していたんだろうか?すぐにでも抱きしめたい衝動を懸命に抑え、ソンユンはテーブルの上に両肘をたて、指を組んだ。
「好きな気持ちの消し方が分からないんです。こんなことソンユニヒョンに相談するのおかしいって分かってるんですけど・・・。」
「何で消す必要があるの?両想いでしょ?」
「両想い・・・なんですか?いや、完全に片想いに決まってます。それに・・・もう好きな人が居るかもしれないですし。」
ジュチャンの気持ちは明らかなのに?まだ告白されてないのか?気付いていないのか?・・・というか、ジュチャンはまだ行動していないのか?
ソンユンの脳内にはクエスチョンマークが浮かんでいた。
「それはないでしょ。チャンジュンのことどうみても好きでしょ。知らなかったの?だから好きなままで良いと思うよ。」
「本当に?」
「本当に。協力しようか?あ、今ここに呼ぶ?お酒好きだし喜ぶでしょ。」
「ヒョン、誰の話してるんですか?」
話がかみ合っていないことに気付いたチャンジュンがそう尋ねた。好きな人は今目の前に居るのに、誰を呼ぼうって言うんだろうか。
「ジュチャナでしょ?」
「違いますよ。」
口の前まで持ってきていた杯がぴたっと止まった。ジュチャンじゃないなら・・・誰だ?
「・・・ちょっと待って、え・・・それじゃあ・・・いや、そんな訳ない。とにかく!その人もお前のこと好きに決まってるって。」
「恋愛対象としてじゃないなら意味ないんですよ!そうやって気休め言わないで下さい。」
チャンジュンの瞳から大粒の涙がポタポタと落ち、焼酎の味をわずかに変えていく。恋愛で泣く姿を見たくなかったから身を引いたのに、チャンジュンが片想いに苦しんでるという事実がソンユンの胸を締め付けた。
「誰だよ?言ってみ?俺が確認してやるから。」
スマホを取り出して、そうソンユンが言った。知らない人物ではないはずだと思い、すぐにでも電話で問い詰めようとしていた。チャンジュンが幸せに笑ってくれないと何のために必死に未練を隠しているか分からない。
「本気で聞いてるんですか?俺の気持ちに本当に気付いてないんですか?」
「いや・・・だから・・・ジュチャンが好きなんだと思ってたから・・・他に思いつかないし。」
チャンジュンはそこで、別れに繋がったであろう最後の喧嘩を思い出した。嫉妬からああ言っていたのだろうか?心変わりしたと思われていたと言うこと?
「気持ちがなくなったから別れようって言ったの、もしかして嘘だったんですか?」
「え?何の話?」
「誤魔化さないで下さいよ!もう気付いたでしょう?俺はずっと!今も!ソンユニヒョンがどうしようもなく好きなんです。・・・今さら遅いって分かってます。俺が悪いって分かってます。誤解されるような行動があったんだろうし。言葉にしなさすぎたんだろうし。メンバーなんだから普通に接するヒョンが正しいって頭では理解してます。プロとして当たり前ですよね。でも・・・どうしても。心がついてこないんです。俺だけのソンユニヒョンが欲しくなっちゃうんです。カメラの前で上手く笑えなくなる前に、どうにか消してしまいたいのに・・・。どうしたらいいですか?ジュチャンを好きになろうとすれば良いんですか?それがソンユニヒョンの望みですか?」
ジュチャンじゃなかった。思い込みだった。チャンジュンはこんなにも真っ直ぐ、苦しみながらもずっと。ソンユンだけを想っていたというのに。ソンユンはますます自分が嫌いになりそうだった。結局また自分のせいで泣いているのだと分かると、どう答えるのが正解なのか分からなくなる。
「今も泣いてるじゃん。いっぱい傷つけてきたじゃん。俺には恋愛する資格なんてないんだよ。俺は俺が嫌いなのに。」
ソンユンの頬を、一筋の涙が伝う。本音をやっと話してくれているのだと、チャンジュンには分かった。
「ヒョンが自分を嫌いでも、俺はヒョンが好きですよ。ヒョンになら傷つけられてもいいんです。・・・俺の涙を拭ってくれるのもヒョンだから。もう一度聞きますよ?俺はやっぱり片想いなんですか?他の人を好きになる努力をしたほうがいいですか?」
スマホを持つソンユンの両手をチャンジュンは自分の両手で包み込み、そう尋ねた。ギュッと力を込めて、真っ直ぐソンユンの目を上目づかいで見つめた。顔がこんなに近付いたのはいつぶりだろうか?この泣き顔を、他の誰にも見せたくはない。ソンユンはそっとチャンジュンと唇を合わせた。涙とお酒が混じった味がした。
「両想いだよ。お願いだから、これからも俺だけを見ていて。好きだよ、チャンジュナ。」
「ヒョンの分も、俺がヒョンを好きでいますね。自分のこと好きになれるようにいっぱい伝えますね。俺は俺のこと好きですけど!」
「ん。ありがとう。」

久しぶりに手を繋いで宿舎までの道を歩いた。気持ちが緩んでいた2人はそのまま宿舎に入ってしまい、リビングに居たテグがただでさえ大きい目をさらに丸くして慌ててスンミンの部屋へ駆け込んだ。離そうとしたチャンジュンに首を振り、ソンユンは手を繋いだまま部屋に入った。
ちょうどシャワーを終えて出てきたジュチャンが声をかけられずに立ち尽くしていたことを、二人は知らない。お互いに顔を見合わせてあの柔らかい表情を向け合っているのを見て、ジュチャンは全てを悟った。
「お似合いですよ。」
そう心の中で呟いた。




おまけ

翌朝、二人が朝からボイスオンリー配信しているのをリビングで聞いているメンバー達。
「俺たち完全に騙されてたの?」
「いや、あれは本当に別れてたって。」
「雨降って地固まるってやつじゃん?」
「2人とも幸せオーラ隠せてなさすぎでは?」
「仕事に支障出ないなら良いよ。」
「一部のファンにはバレてそうだけど。」
「そしたら俺がチャンジュニヒョンとくっついておきますよ!あ、今V入ってきましょうか?」
「ソンユニヒョンを怒らせたいの?やめとけよ。」





***

仲直りした日はもちろん、スンミンが気を利かせました。はい。
まあこれからも疑うだろうし嫉妬するだろうし愛が重いと思うけど。
けんかっぷるしてれば良いと思います。笑
2021.04.06


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